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ファンド組成

行為計算否認と 趣旨目的解釈及び立法方向

更新日時:2017/11/29

IBM訴訟の否認は行為計算不当だった
IBM訴訟事件で国税当局は、行為計算否認の権限発動で、自己株式取得によるみなし配当を単純配当に置き換える更正処分をしています。
この置き換え内容が、私法上真正に成立している法律関係をより適切なものに組み替えることに成功しているか、には疑問が湧きます。
そもそも、税法が創り出した制度の適法的利用を、国税当局が別な、より適切な行為や計算に置き換えることなど、困難なのではないかと思われます。
法制度の濫用抑制には趣旨目的解釈   
最近は、都市銀行による外国税額控除余裕枠彼此流用事件、旺文社HD事件などを経由して、立法趣旨目的論的解釈などを介しての節税・租税回避の行為計算に対する適法外しの傾向が拡大方向にあります。
趣旨目的解釈への傾斜は、立法時に予測できなかった行為によって、多額の租税が軽減され、執行当局がいらだちを募らせていることの、表れなのかもしれません。
趣旨目的解釈は使いにくい
趣旨目的解釈が行われると、対象となる行為は、すべて適法であるとの前提である租税回避行為という分類から外れ、違法行為との判定を受けることになります。違法となると、制裁の内容も異なってきます。
ただ、趣旨目的解釈により制度の適用を否定することは、法令に不文の要件を付加することにほかならず、文理解釈重視により法的安定性と予測可能性を確保しようとする租税法律主義の立場からは否定的に見られています。
個別否認規定を網羅している税法
行為計算否認規定は今や大企業税制に近く、この規定を根拠に否認された経験を持つ税理士は滅多にいないと思います。
税制改正の歴史は、否認したい行為を個別に網羅してきた歴史とも言え、租税回避行為の防止は常に税制改正の中心テーマだった、とも言えます。
租税回避行為防止は、行政権・裁判権の課題であるよりも、立法権の課題である、というのが本来的理解であるべきです。
立法的解決の方向は
個別否認規定を盛り込むことのほか、今や、租税回避策の義務的開示制度の導入、一般的租税回避禁止規定の立法化が検討の重要局面にさしかかっているようです。

ビルの屋上・コンビ二の横にある謎の箱? キュービクル(高圧受電設備)の耐用年数

更新日時:2017/11/28

キュービクル(高圧受電設備)とは?

「キュービクル(キュービクル式高圧受電設備)」とは、高圧電力で契約している者が設置している受電機器一式(開閉器・断路器・変圧器・制御装置)のことです。

規格化された金属箱にコンパクトに納められていることからキュービクル(小箱Cubicle)と呼ばれています。皆さんもビルの屋上等の片隅にひっそりと設置されているのを目にされたことがあるでしょう。

電力契約は、高圧契約と低圧契約があります。低圧契約の場合、発電所から電柱まで送電された電気の電圧(6600V)が電柱に設置されている柱上変圧器(トランス)で使用電圧(電灯100V・動力200V)に下げられますが、高圧契約の場合、このキュービクル内で使用電圧に変圧されます。

高圧契約 契約電力50kw以上

工場・商業施設・病院など

低圧契約 契約電力50kw未満

商店・美容院・事務所など

設置費用は小規模工場やコンビニ(100kw)でも200万円以上となるようです。

なお、設置後は電気事業法で定められた保安点検の義務が生じ、1か月1回・年1回等の法定点検が求められます。

キュービクルの耐用年数等の取扱い

キュービクルの耐用年数は、どのような用途により使用されるかにより異なります。

製造の用に供されている場合には、「機械装置」のその業種の製造業の耐用年数となり、事務所等の場合には、「建物附属設備」の「電気設備(照明設備を含む)」「その他のもの」の15年となります。

また、工場のように、そのキュービクルが製造用と事務所用に共用されているときは、次のように判断します。

キュービクル 主な用途により判定
配線設備(工場機械の動力線・分電盤) 「機械装置」のその業種の耐用年数
配線設備(事務所用・電灯配線) 「建物附属設備」「電気設備」「その他のもの」の15年

工事費負担金は無形固定資産

電力会社と高圧契約等を行う場合には、電力会社から「工事費負担金」の支払いが求められることがあります。この支出は、無形固定資産の「電気ガス供給施設利用権」に該当し、定額法(耐用年数15年)で償却することとなります。

平成29年分 年末調整の留意点

更新日時:2017/11/28

年末調整の時期となりました。この年末調整は、毎月の給料や賞与から源泉徴収をした税額と、その年の給与の総額について納めなければならない税額とを比べ、その過不足額を精算する手続です。この手続により、大部分の給与所得者は、改めて確定申告をする必要はなくなります。
給与所得控除額の改正
今年の改正は、給与所得控除額の改正のみで、その内容は、給与収入1,000万円超の場合の給与所得控除額は220万円が上限とされたことです。
この改正に伴い、年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表も改正されています。
平成30年分の扶養控除等(異動)申告書
(以下、同申告書)
ところで、同申告書の提出は、年の最初の給与等の支払いを受ける日の前日までに給与等の支払者に提出することになっていますが、実務においては、前年の年末調整の際に同申告書を受理することも多々あります。
この同申告書ですが、平成30年分から配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の改正に伴って、同申告書の記載欄に、源泉控
除対象配偶者、同一生計配偶者の欄が加わり、平成30年1月以降の給料等の支払いの際には、配偶者が源泉控除対象配偶者、また、同一生計配偶者が障害者に該当する場合には、それぞれ扶養親族の数に一人を加えて源泉徴収することになりました。
そこで、源泉控除対象配偶者、同一生計配偶者の該当者の要件について留意が必要となります。前者は居住者の合計所得金額が900万円以下で生計を一にする配偶者の合計所得金額が85万円以下の人、後者は居住者の合計所得金額には制限がありませんが、生計を一にする配偶者の合計所得金額が38万円以下の人です。いずれも青色事業専従者等は除かれます。
なお、これら合計所得金額ですが、同申告書を提出する日の現況により判断することとなります。
年末調整の際に提出を受ける同申告書の記載欄を今一度確認しておきましょう。

IBM訴訟に見る 共謀罪既遂への回路

更新日時:2017/11/24

IBM訴訟判決に見るIBMの周到さ
IBM税務訴訟事件は、米国の世界的大企業による周到かつ超大規模な租税回避スキーム(架空的欠損金の適法的創出)を巡ってのものでした。
日本国内に新たに用意した中間親会社は、平成21年4月28日に最初の連結納税申告書を提出するものの、その中では、平成14年から平成17年までの欠損金を損金としない内容の申告としており、納税を済ませたのちに、「更正の請求」を行い、欠損金の損金算入が認められるかどうか様子見をする周到さを発揮しているのに、国税当局は、更正の請求に対して、平成21年5月15日に、欠損金の損金算入を認める更正処分をあっさりと出した上で、その後税務調査を行い、平成22年2月19日にその損金算入を否認しています。
ここから係争開始です。
同族会社の行為計算否認の発動
当局は、法人税の負担を不当に減少させる行為計算だとして、更正処分をしたのですが、判決を見ると、日本橋税務署長が平成22年2月19日付けで原告に対してした更正処分の最も古いものは、平成14年10月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税についてでした。明らかに、5年超の期間について対象としています。
適法的租税回避行為だとすると、行為計算の不当性の追求を受けても、更正処分の期間制限の壁に阻まれて、5年しか遡及できません。5年を超える更正処分をするときは、偽り不正条項の適用となるときです。
不当から不正への架け橋
IBMに対してなされた更正処分が、偽り不正の場合の5年超の期間に対応するものだったとすると、行為計算不当追及が偽り不正追求に転移していることになります。
すべて適法で、行為計算の不当しか問えなかったとしても、偽り不正の場合の過去7年間の遡及更正をする、という行政の実務がここにあるのだとすると、不当から不正への懸け橋は、確かにあるのです。
不当から不正への回路
不当から不正への回路があるのだとすると、そして、各税法における偽り不正の行為の概念が同一だとしたら、テレビや新聞で、節税行為が共謀罪に該当する、と言っていたことが、正しかったことになります。

経理の方・会計事務所には馴染み深い 電卓といえばシャープとカシオ

更新日時:2017/11/20

計算機は「機械式」から「電気」「電子」へ

経営再建で新聞を賑わせているシャープですが、私ども会計業界では、「計算機」のメーカーとして馴染み深い会社です。

1970年頃までの会計業務では、「機械式計算機」が用いられていました。これは、歯車の組み合わせにより演算を行うものでクランクを手回しして操作するもの(手動をモーターにしたものが「電動計算機」)。国内では「タイガー計算器」が有名でした。

その後、機械的要素をなくし、リレー(電磁石によるスイッチ)を用いた回路で計算を行う「電気計算機」が登場します。この計算機を開発していたのが「カシオ」。今でも社名は「カシオ計算機」です。

電卓戦争~開発・価格競争の後、日常品化

さらにトランジスタ、IC、LSIを使った「電子計算機」の時代に入ります。シャープが世界に先駆けて1964年に「コンペット CS-10A」を発売。大当りします(日本で5番目の『IEEEマイルストーン』認定)。その後、40社以上の会社が参入し、熾烈な価格競争を繰り広げ、「電卓戦争」と呼ばれました。その中で「電卓」はすっかり日常品化し、最後まで生き残ったのは、日本ではシャープとカシオ、キヤノンでした。

キー配列の他、こだわりのある2社の電卓

中でも激しく競争した2社の「自社技術へのこだわり」はキー配列に見て取れます。

【シャープ式】※キヤノンと一部のカシオ

CE
× ÷
00

【カシオ式】

+/- ×
AC
00

その他、定数計算(同じ数を連続して計算すること)やメモリー機能の操作も両者で微妙に異なります。どちらが良いという訳ではないですが、「好み」は分かれますね。

「ドリル付き」「防水・防塵」「余り計算」?

シャープは「脳を鍛えるドリル付き電卓」、カシオは、水回りやほこりの多い場所でも使用できる「防水・防塵電卓」(キーパッドが着脱式で水洗い可)、余りが出る割り算ができる「余り計算電卓」(物流倉庫や調剤薬局で使用)など面白い電卓も出しています。

行為計算否認の対象と逋脱

更新日時:2017/11/16

同族会社規定を非同族会社にも適用
昭和40年12月15日の東京地裁判決は、法人税の負担の不当減少と認められるか否かは、「当該行為計算が経済人の行為として不合理、不自然のものと認められるかどうかを基準としてこれを判定すべきものであり、同族会社であるからといって、この基準を越えて広く否認が許されると解すべきでないと同時に、非同族会社についても、右基準に該当するかぎり否認が許されるものと解すべきである」、としています。
その後、類似の判決はあったようですが、当時は、同族会社行為計算否認規定は創設規定ではなく確認規定と解する考え方があったため、非同族会社に対しても、このような文理無視解釈の判決が行われました。
今では、組織再編や連結納税での行為計算否認規定が創設されているので、確認規定説を唱え得る環境ではなくなっています。
行為計算否認の先に逋脱がある
昭和33年5月29日の最高裁判決に係わる争訟は、地裁・高裁・最高裁のすべてで納税者勝訴だったものですが、その最高裁に芝税務署長が提出した上告理由書は、次のように述べています。
・・・・同族会社の行為計算否認の規定は、否認される行為計算が合理的であるか否かに関するのではなく、徴税官庁の関心の対象となるのは、逋脱があるか否かの点であって、会社の行為計算自体が果して経済的に見て合理的であるかどうかは、徴税官庁の干渉すべき限りでない。・・・・
戦後初期の時代を反映してか、行為計算否認の対象は逋脱の有無としており、適法で税法違反がなくても、刑事法規・偽り不正条規に触れるとの認識が表現されています。最近露骨にいう人はいませんが。
今でも言っている人はいます
上記の上告理由書は、昭和25年の法人税法改正で、行為計算否認規定の文言が変わり「逋脱」の文言が消えたけれど、改正前後の主旨目的は同じといい、税務大学校の論文集「税大論叢」などを見ていると今でも、「同族会社の行為計算の否認規定を適用した場合に逋脱犯の成立を一切否定するのであれば疑問である」と言っている人がいます。
逋脱や偽り不正行為は、共謀罪に直結する概念なので、適法行為計算との回路があるのは、怖いことです。

共謀罪と会社・暴力団の節税

更新日時:2017/11/08

税理士会総会での質問と回答
税理士会の機関紙の記事によると、今年の定例総会で、次の質問がありました。
衆議院における参考人意見陳述では当事者に節税の意図しかなく、脱税が行われなかったとしても申告前に捜査当局により脱税のおそれがあるとされた場合には、当該法人税等の修正申告をした税理士が捜査対象となる旨の発言があったことから、税理士会として、どの様に考えているか教えていただきたい。また、会員に対する情報提供について教えていただきたい。
これに対する回答は、次のようなものでした。
質問のような正当な事業活動を行っている一般の事業会社は、毎年脱税を繰り返しているというだけでは組織的犯罪集団に当たることはない旨、第193回衆議院法務委員会において政府参考人からの答弁があった。さらに、日税連においても国税庁を通じて情報収集に努めており、いずれ会員に周知すると考えられる。
国会の政府参考人の答弁
・・・・所得税の免脱等の実行を計画する例といたしましては、例えば暴力団がその組織の維持運営に必要な資金を得るために、組織的に所得を隠匿して脱税することを計画するといったことは考えられる・・・・脱税の目的がなければ、もうその会社は解散いたします、あるいは、そこには結合しません、そういうことであれば、脱税が共同の目的になると思います・・・・脱税を計画していること、あるいは仮に何回か繰り返しているからといって、その団体の目的が脱税にある、あるいは犯罪実行の目的にあるということにはならない・・・・
これは、答弁の部分抜粋です。この答弁によると、暴力団も脱税の目的を放棄したら解散するような団体ではないから、「偽り不正の租税回避」計画の実践をしても、共謀罪で問えないことになります。
政府側答弁は暴力団を守ってくれるか
暴力団が租税回避プランで共謀罪に問われたとき、脱税目的なんかもたなくなっても組織の解散などありえないのだから、そもそも「組織的犯罪集団」には該当しない、と主張しても、法律条文の文理からはそのような解釈は出てこない、と言われるのではないでしょうか。

届出期限には、要注意! 「事前確定届出給与」とは

更新日時:2017/11/07

「事前確定届出給与」とは?
法人税法では、原則として役員へのボーナスを損金に算入することは認められていません。しかし、事前に税務署のお墨付きをもらい、損金算入が認められるものがあります。これを「事前確定届出給与」といい、具体的には次の①と②に該当するもの(職務執行前に支給時期や支給額が決まっていることが確認できるもの)をいいます。
① 定め その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与
②届出 届出期限までに納税地の所轄税務署長に事前確定届出給与に関する届出をしているもの
事前確定届出給与に関する定め
この事前確定届出給与の適用を受けたい場合には、①の定めを定時株主総会又は取締役会の議事録に残します(「いつ」「誰に」「いくら」払うという事項の記載が必要)。
【例】議長は、下記の事前確定届出給与を支給したい旨を提案し、その承認を受けた。
支給日:平成〇年〇月〇日
支給対象及び支給額
代表取締役△△   〇〇〇円
届出書の届出期限には要注意!
次に②の届出を所轄の税務署に提出します。届出期限は次のAとBのうち、いずれか早い日になります。
A 株主総会等の決議の日から1月を経過する日
B 会計期間開始日から4月を経過する日
例えば、3月決算法人(定時株主総会5月20日)の場合には、Aが6月19日、Bが7月31日となり、AとBの早い日である6月19日までが届出期限となります。
届出は「役員ごと」「職務執行期間ごと」
②の届出には、次の届出書と付表をセットにして提出することになります。
届出書 1枚 「決議をした日」「決議をした機関」「届出期限となる日」などを記載
付表1・2
事前確定届出給与等の状況 支給人数分 対象者氏名(役職名)・職務執行期間(総会日~)・事業年度(執行期間開始日の属する会計期間と翌会計期間)など記載
事前確定届出給与は、役員ごと、職務執行期間(定時総会日~次の総会日)ごとで個別にエントリーする形になります。